第10回目は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の発着駅のひとつである、京都駅でのおもてなしの取り組みをレポートします。
世界に名だたる観光都市、京都の玄関口であり、日々多くの旅行客が訪れる京都駅。「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」では、全てのコースの発着駅となります。
これから始まる美しい日本をめぐる旅の門出に、また山陰・山陽の魅力を堪能したその旅のゴールとなるこの場所で、乗客の皆様をもてなすためにJRの社員たちはどのような取り組みを行っているのでしょうか?
JR西日本京都駅 駅長の小野佳典さんと、JR西日本京都駅 副駅長の村橋泰治さん、そして取材当日に乗客の皆様をお見送りした貞守菜穂さん、大本佳恵さんにお話を伺いました。
地域を挙げて、瑞風を送り出した日
2017年6月17日、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」運行初日。
京都駅には、新たに走り始める列車を見送るために、多くの人々が集まっていました。その顔ぶれは横断幕を掲げるJR西日本の社員はもとより、駅ビルやホテルグランヴィア京都の従業員、構内事業者、近隣にある梅小路小学校のこどもたち、駅前地下街・京都タワー・下京区からはそれぞれご当地キャラが、祇園からは舞妓さんまで駆けつけて、ホームは大にぎわい。
さらに、近隣の梅小路公園や京都鉄道博物館、駅の東の跨線橋などに多くの方々が瑞風に向かって手を振り、瑞風と乗客の皆さんを見送りました。
こうして、地域を挙げての大盛況となった瑞風の運行初日。
その裏には、JR社員たちの綿密で入念な下準備がありました。
その取り組みの様子を語ってくれたのは、JR西日本京都駅副駅長の村橋泰治さん。「瑞風は会社挙げてのビックプロジェクトですから、社員からもしっかりとおもてなしをしようという意見が上がりました。そこでJR西日本京都支社と相談して、お出迎えやお見送りの際の横断幕を作ることにしたんです。横断幕には京都市と京都市観光協会の名前も入れて、地域を挙げて瑞風のプロジェクトを盛り上げていくという想いをこめました。また、横断幕の他にも0番ホームや中央改札口付近には、歓迎装飾やディスプレイの掲出なども掲出しています。」
続いてお話しいただいたのはJR西日本京都駅 駅長の小野佳典さん。「瑞風のプロジェクトに関しては、JR西日本だけが盛り上がるのではなく、地域全体を巻き込んでいくことが重要です。瑞風の立ち寄り地である鳥取や島根とは違い、京都駅は発着地ですから地域の魅力を伝えるためにも京都市や観光協会の方々と連携していくことが重要です。その意味では、横断幕に名前を入れ機運を高めたこと、そして運行初日に多くの方々が駅に集まっていただけるよう働きかけを行えたことなどは有意義でした。また、運行初日より京都支社総務企画課の調整により京都の文化にゆかりのある方に、ホテルグランヴィア京都の瑞風のお客様専用のラウンジで、お客様向けに講話を行っていただいております。こうした取り組みを、今後も私達だけでなく、地域を巻き込んで続けていければと考えています」と地域との連携の大切さを語っていただきました。
お客様本位のおもてなしを続けていくために
こうした地域を挙げたおもてなしの他にも、京都駅では独自の工夫で瑞風の快適な旅のサポートを行っています。
ひとつは、安全への取り組み。
多くの人々が利用する京都駅、瑞風が到着するのは中でも中央改札口の目の前にある0番乗り場です。当然、ここに優美な車両が入って来れば多くの人の注目を引くことになります。そこで、瑞風の発着前には各ホームに警備のための社員を配置するほか、先頭車両の停車位置付近にはパーテーションテープを設置し、ホームに集まった皆さんが安全に瑞風の姿を見られるように配慮しています。
もうひとつは、社員への教育。
瑞風の到着ホームの足元には、エンブレムとともに番号の振られた目印が付けられています。これは、5コースそれぞれで異なる瑞風の号車ごとの停車位置を表すもの。これを照合することで、駅員は的確に列車の到着位置を把握することができ、お見送りやお出迎えの準備ができるのです。
最後のひとつは、社員自身が考え実践するおもてなしの工夫。
瑞風が到着する少し前に、0番ホームにはディーゼル車である「スーパーはくと」が停車しています。その際、瑞風のお客様が駅構内にいらっしゃる前に、車両を小移動させています。その理由は「スーパーはくと」の停車位置が従来通りだった場合に車両の排気管が、瑞風のお客様の専用扉の前に来てしまうから。
これは「ディーゼルエンジンの大きな音や煙、においで旅の快適さが損なわれないように」と、瑞風試運転のときに輸送担当の社員が声をあげたことがきっかけでした。現場社員の声を元に、従来の停車位置から列車を移動させることで、お客様の素敵な旅のはじまりを損なわないようにというかたちのおもてなしです。
こうした、大きな取り組みはもちろん、駅のホームでは瑞風が到着する前に駅員が率先してゴミ拾いをするなどの姿も見られます。「少しでも瑞風の乗客の皆さんが快適に過ごせるように」との工夫は、現在も駅員みなさんの手によって、継続・工夫され続けているのです。
華美ではなく、お客様に寄り添ったおもてなしをこれからも
期待いっぱいで、ホームにこられるお客様の笑顔を見るのが嬉しい」と語るのはこの日、横断幕を持って乗客の皆さんをお迎えした貞守さん。
現在京都駅では、横断幕をはじめとしたお見送りの担当を勤務スケジュールによって決定しており、対象となった駅員は、瑞風へのおもてなしに参加しています。
「私達から乗客の皆さんに、お話をすることはありませんが笑顔で挨拶を交わしたり、“一緒に写真撮って”と言われると、本当に嬉しくなります」と同じく横断幕の係となった大本さんも声を揃えます。
そんな二人を見ながら、小野さんは「大切なのは、これからも継続していくこと。瑞風の運行が続いていけば、この先リピーターのお客様も増えてくるでしょう。その時に同じようにお出迎えができるように、いつでもお客様それぞれがもつ旅の理想にそっと寄り添うように心遣いあるサービスを行っていくこと、これが京都駅の理想とするおもてなしの姿です」と話を締めくくりました。
控えめでありながら、瑞風にご乗車にされるお客様、
お見送りされるお客様の笑顔のために
京都駅の取り組みは今後も続いていきます