MIZUKAZE PROJECT STORY

瑞風プロジェクトストーリー

December 2019

vol.11

夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り

夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り

 第11回目は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の発着駅となる大阪駅での取り組みをご紹介します。

 JR大阪駅は、毎日87万人のお客様が乗降される、JR西日本で最大の駅です。そのように大きなJR大阪駅では、いったいどのようにして「瑞風」のお見送りやおもてなしが行われているのでしょうか。JR大阪駅 駅長の新林由浩さんのお話を伺いました。

「瑞風」のおもてなしに、「特別なこと」はしていません

JR西日本 大阪駅 新林由浩 駅長JR西日本 大阪駅 新林由浩 駅長

 現在JR西日本 大阪駅の駅長を務める新林さんは、これまで新大阪駅・新今宮駅・放出駅の駅長を歴任した人物。その新林さんが「瑞風」のお見送り、おもてなしに際して心がけていることは「自然体」であること。
 「大阪駅では、横断幕やのぼりといったアイテムを新たに作ったり、セレモニーをしたりといった特別なことはしていません。ホーム上のお客様に手旗をお渡しし、大阪駅の社員、それから駅構内の清掃を行うグループ会社のJR西日本メンテック、飲食や物販を担当するJR西日本フードサービスネット、JR西日本デイリーサービスネットといったグループ会社の社員が、お客様と一緒にホームからお見送りします。」

 実は、非常にシンプルなお見送りとおもてなしの背景には、お客様の思いを第一に考えた心遣いがあるのでした。

 「私も「瑞風」のお客様をアテンドすることがあるのですが、皆さん本当に嬉しそうな表情をされているので、見ている私も嬉しくなりますし、また少し羨ましくもなります。「瑞風」の中で過ごす一泊二日、ないしは二泊三日という時間は、いわば“夢の時間”です。その期待をそのままに旅を始めていただくため、私たちはできる限り自然な形で、お客様の時間や思いを大切にしたおもてなしをしたいと考えているのです。」と新林さんは語ります。

“当たり前”と“自然体”を作るための努力は欠かさない

 「瑞風」にご乗車されるお客様に無理なく寄り添う大阪駅のサービス。多くの利用者を抱える中、自然体となれる状況を作ることは意外に難しいのだといいます。

 「「瑞風」の運行コースや到着時間、曜日によってはコンコース上が混雑する場合がありますので、「瑞風」にご乗車されるお客様と他のお客様が接触しないように、アテンドする際には特に注意しています。また、やはり人気の列車ですからホームに見学に来られる方も多くいらっしゃいます。こういった状況を常に想定し、乗務員区所と大阪駅で働くメンバーの連絡会が連携して「瑞風」の入線と出発はできる限りスピードを落として運転を行う等、安全運行に努めています。この他にも社員一人ひとりが、ホーム上で注意するべきポイントを考え、率先してご案内にあたっています。「瑞風」にご乗車されるお客様と他のお客様がご不快な思いをされないように行動しながらも、それを表に出さないことが大切。これは日頃から数多くのお客様に接していたり、特別列車の運行を経験したりして、“勘所”を押さえている大阪駅の得意とするところですね。」

夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り
夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り

「瑞風」入線と共に、制服姿のスタッフがホームに登場

 こうして様々な安全対策を講じた上で迎えた「瑞風」の入線時刻。
 ホーム上には手旗をもったお客様と共に、駅員をはじめグループ会社のスタッフが制服姿で勢揃い。「瑞風」の先頭車両近くに列をつくり、笑顔で手を振って「瑞風」を見送る姿はまさに壮観の一言です。やがて列車がホームを過ぎ、見えなくなるまで手を振り続けた社員が、今日も無事にお見送りができたという表情で、ほっと一息つくころ、ホームにアナウンスが響き渡ります。
 『皆様、本日も「瑞風」のお見送りにご参加いただき、まことにありがとうございました。』実はこれも大阪駅ならではの取り組み。一緒に「瑞風」を見送ったお客様にお礼を言いたいと社員が発案し実践しているのです。

 新林さんは「やはり、皆さんに笑顔でいていただきたいですから、“「瑞風」が見られてよかったな”、“いつか乗ってみたい”と思っていただけるような自然体の取り組みを、これからも続けていきたいですね。」と話してくださいました。

夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り
夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り

「瑞風」が夢の時間を届け続けるために、当たり前のことをこれからも

夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り

 「瑞風」を見送った後、新林さんはこれからの大阪駅での取り組みに関してこう語ります。
 「かつて、大阪駅から札幌へと向かう“トワイライトエクスプレス”という寝台特急がありました。これは私たちにとって思い入れの深い列車で、2016年に運行終了となったときには実に寂しく思いました。それが、「瑞風」という新しい形で生まれ変わり、今度は西日本の魅力を伝えるべく運行を開始した。これは、鉄道会社の社員として心から嬉しいことなのです。これからも、「瑞風」が運行を続け、多くのお客様に夢の時間を提供し続けるために、私たちもお見送りなどのおもてなしを当たり前の習慣として続けていきたいと思っています。
 運行開始から一年半が経ちましたが、まだ大阪駅にも「瑞風」のお見送りに参加できていない社員もいます。また、大阪駅だけでなく、近隣の駅の社員にもお見送りに参加してもらえるよう、声がけも実施しています。JR西日本だけでなくグループ会社の方々、地域の方々と一緒になって、これからも「瑞風」を愛し、見守り続けていきたいですね。」

 「瑞風」の作る旅情や、ご乗車になるお客様の高揚感を大切にしたいという、熱く真摯な思い。その結実したものこそが、「快適さの下地は作っても、お見送りのために特別な演出はしない」という大阪駅の選択だったのです。

夢の時間の始まりに対しての、自然体のお見送り

 「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の名前は多くの人の思い出と、未来への願いを背負っている。