MIZUKAZE PROJECT STORY

瑞風プロジェクトストーリー

April 2019

vol.14

「音楽でもてなしたい」と意気込む、小さなアーティストたち

「音楽でもてなしたい」と意気込む、小さなアーティストたち

 第14回目は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」山陰コース下りの立ち寄り観光地、「城崎温泉駅」で定期的に「お出迎えコンサート」を開いてくださっている豊岡市の五荘(ごのしょう)小学校金管バンドについてリポート。「瑞風」に関わる豊岡列車区のメンバーと学校へお邪魔し、指導者の皆さんと語らってきました。

楽器を吹きたい子どもたちが、自主的に奏でる音楽

「音楽でもてなしたい」と意気込む、小さなアーティストたち

 自然豊かな丘の上にある豊岡市立五荘小学校。金管バンドには、楽器を演奏したい3年生から6年生までの子どもたちが集っています。

 結成は2008年。当時、小学2年生だった平尾淳さんの娘さんが持ち帰った“指導者募集”という案内を目にし、その役を買って出たのが始まりでした。かつて五荘小にあったトランペット鼓笛隊に所属していたため、「運命を感じた」と平尾さん。最初は5人だったメンバーも、今では60人以上になりました。

五荘小学校金管バンド 総監督・指揮者の平尾淳さん五荘小学校金管バンド
総監督・指揮者の平尾淳さん

 校内のクラブ活動ではなく地域活動の一環として始まり、現在も学校と保護者が協力しながらサポート。放課後や休日に、高学年がお手本となって練習に励んでいます。平尾さんによれば、「先輩の音を聴き、見て覚えていくのが最短のコース」とのこと。

 「『明日は練習だよ』と親御さんに言われて来るのはだめ。とにかく『楽器を吹きたいな』と思ったときだけおいでと言っています。だから集まる子は、みんな目がキラキラしているんですよ。“学ぶより真似べ”という姿勢を大切に、僕は褒めて伸ばすようにしています。誰かを褒めると『私も褒められたい!』という気分になり、次の練習にすごく良い影響が出てくるんですよね」。

五荘小学校金管バンド

 「100回の練習より1回の本番。いろんな人の前で演奏し、喜んでもらう経験が成長につながる」と考え、地域のイベントやコンサート、幼稚園や福祉施設などでの演奏にも積極的に取り組んでいる五荘小金管バンド。さまざまな活動を通じて音楽の楽しさを知るとともに、自主性や協調性を育んでいるのです。

「お出迎えコンサート」の開催に子どもたちも大興奮!

JR西日本 豊岡列車区 上村哲央 運転士JR西日本 豊岡列車区
上村哲央 運転士

 「瑞風」との関わりが生まれたのは、2017年6月の運行開始およそ1カ月前のこと。当時、豊岡列車区の指導操縦者だった上村哲央運転士が、金管バンドメンバーのお父さんたちの集まりに参加したことがきっかけでした。

 「娘がトランペットをやっているんですよ。その会合で平尾さんから『もっと演奏回数を増やしたい』と聞き、『瑞風』のおもてなしとして企画できないかと提案してみたところ、トントン拍子に話が進んで(笑)。7月末には城崎温泉駅で演奏できることになったんです」。

五荘小学校金管バンド 指導補助の西賀真紀さん五荘小学校金管バンド
指導補助の西賀真紀さん

 毎年6月に3年生が加わり、新メンバーとなる五荘小金管バンド。なかには当時、豊岡鉄道少年団に所属していたメンバーもおり、「瑞風」の運行開始日には旗を振ってお客様を歓迎したそうです。指導補助を担当している西賀真紀さんの娘さんもその一人でしたが、「お出迎えコンサート」が決まったときは大興奮だったといいます。

「音楽でもてなしたい」と意気込む、小さなアーティストたち

 子どもたちが駅のホームで演奏するのは初めてのこと。本番の2週間ほど前にリハーサルを行ったところ、自然と集まった温泉街の方たちが喜んでくださり、子どもたちも手応えを感じられたようです。そして迎えた当日。「瑞風」がホームに近づくとみんなで大歓声を上げ、演奏にも全力投球してくれました。

JR西日本 豊岡列車区 池田大地 運転士JR西日本 豊岡列車区
池田大地 運転士

 サポートに駆けつけた、豊岡列車区CSグループのリーダー、池田大地運転士も、「金管バンドの演奏が生で聴けるという貴重な機会に、観客の気持ちで楽しませてもらいました。『瑞風』のお客様だけでなく、たまたま駅におられた方々も含め、ものすごく盛り上がったんですよね。お客様が笑顔になっていくのを間近で拝見できて感激しました」と、興奮気味に振り返ります。

「こんなお出迎えをしてもらえるなら、私も『瑞風』に乗ってみたい」

2018年1月の「お礼訪問」の様子2018年1月の「お礼訪問」の様子

 大好評を受けて、同年12月には2回目のコンサートを実施。「瑞風」のお客様が演奏を楽しむ時間を確保したことで、さらに盛り上がりを見せました。2018年1月には、クルーらが「お礼訪問」として学校へ。「瑞風」の説明をすると、「どうやったらクルーになれるの?」といった質問も飛び出しました。平尾さんは「『瑞風』についてより深く知れたことで、演奏に対する意識も高まった」と語ります。

JR西日本 豊岡列車区 三木彩奈 運転士JR西日本 豊岡列車区
三木彩奈 運転士

 2018年7月には2年目の「お出迎えコンサート」が始動。そのときからサポートに加わったCSグループの三木彩奈運転士は、「タダで聴かせてもらっていいの!?というぐらい(笑)、上手な演奏に圧倒されました。駅のご利用者様から『すごいね~中学生?』と訊かれ、『小学生なんですよ!』と誇らしげに答えてしまったんですが(笑)、皆さん興味津々でしたよ」とうれしそうです。

JR西日本 豊岡列車区 沖覚 豊岡列車区長JR西日本 豊岡列車区
沖覚 豊岡列車区長

 同じ日に初めて演奏を目にした沖覚・豊岡列車区長も、「駅にいる皆さんの感動や高揚がダイレクトに伝わってきました。近くにいらっしゃった方から、『こんなお出迎えをしてもらえるなら、私も乗ってみたい』なんてお声も…。子どもたちのパワーは本当にすごいです」と、力説してくれました。

 そして2018年8月から、なんと「瑞風」の運転を担当することになった上村運転士。「お客様やクルーの様子を子どもたちに伝えると、どんどんテンションが上がるんですよね。目を輝かせ、うれしそうに演奏している姿を見ると、やれて良かったなとしみじみ感じます」。

世代を超えた演奏に、涙するお客さまも…

 「お出迎えコンサート」で欠かさず演奏されるのは、偶然にも結成当初から練習している「銀河鉄道999」です。平尾さんは、「10年前から『瑞風』の前で演奏する予感がしていたんですかね?」と微笑みます。さらには「瑞風」のテーマソングを作曲された葉加瀬太郎さんの「ひまわり」も重要な1曲に。ラストは希望あふれる「宝島」でお見送りしています。

「音楽でもてなしたい」と意気込む、小さなアーティストたち

 驚くことに、ほかの曲はその場で決めるケースがほとんど。幅広い世代の方に喜んでもらえるよう、なんと20曲以上は楽譜を見ずに演奏できるそうです。小さなお子さんがいらっしゃればアニメ「ドラえもん」や「それいけ!アンパンマン」、海外からのお客様であれば「The Lion King」のテーマ、ご年配の方であれば「暴れん坊将軍」や「水戸黄門」を含んだ時代劇メドレーを披露するなど、客層に合わせて選曲。若い彼らが昭和の名曲「青い山脈」を演奏すると、涙を流されるお年寄りもいらっしゃったのだとか。

飛躍の大きなきっかけとなった「瑞風」との出会い

京都鉄道博物館でのクリスマスコンサートの様子京都鉄道博物館での
クリスマスコンサートの様子

 「瑞風」との出会いがきっかけとなり、ステージの数もぐっと増えたそう。5年前に年間10を超えた公演数は2017年に急増し、2018年度には30近くに。12月には京都鉄道博物館でのクリスマスコンサートも開催。高砂高等学校や滝川第二高等学校などの名門吹奏楽部と合同演奏も展開しています。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部には創部のきっかけとなった平尾さんの娘さんも在籍。感慨深い共演となりました。

結成10周年を記念してつくられた五荘小学校金管バンドのTシャツ。頭文字の「g」をト音記号風にデザイン結成10周年を記念してつくられた
五荘小学校金管バンドのTシャツ。
頭文字の「g」をト音記号風にデザイン

 演奏回数を重ねることで実力も高まり、2年連続で「MBSこども音楽コンクール」地区予選を優秀賞で通過し、西日本大会で優良賞を受賞。2018年の「全国小学校管楽器合奏フェスティバル」西日本大会へも、兵庫県の代表として出場できました。

 「『この駅に来て良かった』『この列車に乗って良かった』という思いを、金管バンドの演奏でさらに強く『瑞風』のお客様に抱いてもらえる環境が続けばうれしいです」と沖覚区長。飛躍し続ける五荘小金管バンドですが、「これからもぜひ『お出迎えコンサート』を続けてほしい」と、豊岡列車区の職員たちは口をそろえます。

生き生きと輝く人がいる地域には、また訪ねたくなる

五荘小学校金管バンド指導補助の逵直子さん五荘小学校金管バンド
指導補助の逵直子さん

 息子さんがチューバを始め、2018年から指導補助に加わった逵(つじ)直子さんは、「子どもたちと同じく、私にとっても『瑞風』は憧れの列車」だと語ります。「豊岡に越してきてから周辺地域の美しさに感動したんですが、人のつくりだした美しい列車に乗って、自然の生みだした美しい景色を体感できる、まさに夢の旅。おもてなしの一環として、心のなかで響き合うような演奏を続けてくれればなと思います」。

「音楽でもてなしたい」と意気込む、小さなアーティストたち

 さらに西賀さんが続けます。「地域に愛され、見守られながら健やかに育つ子どもたちは、やがて地域を愛する人になってくれるはず。生き生きと輝く人がいる地域は、それが魅力となって、また訪ねたくなりますからね。訪れた人に感動を味わっていただくことが、もてなす側のモチベーションにもなり、幸福感を味わえる…とてもいい循環が生まれていることに感謝しています」。

「音楽でもてなしたい」と意気込む、小さなアーティストたち

 そして「音楽で精いっぱいもてなしたいという、奏者としてのハートも育ってきたように思います」と平尾さん。「『瑞風』はやはり特別です。ホールとは違い、外で吹く演奏は生の音が勝負。お客様の熱も身近に感じられます。彼らはふだん小学校では“児童”ですが、人前に出ると“アーティスト”になる。そういう部分をもっと伸ばしてあげたい。子どもたちも望んでいるので、ぜひ長く続けたいですね」。