MIZUKAZE PROJECT STORY

瑞風プロジェクトストーリー

August 2019

vol.20

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

 第20回目は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の山陽・山陰周遊コースで、2日目のお昼に訪ねる島根県雲南市「食の杜 室山農園」へとご案内。地元のお母さんたちが振る舞う手料理に込められた想いをお届けします。

地域に暮らす人たちが手がける“田舎料理のレストラン”

 島根県雲南市、旧木次(きすき)町の日登(ひのぼり)地区にある「食の杜」。日本の有機農法のパイオニアとしても知られる木次乳業の創業者・佐藤忠吉さんが中心となり、1993年、安心安全な生産活動や地域づくりなどをめざして立ち上げたコミュニティです。県東部の山里に位置し、現在は有機野菜をつくる「室山農園」をはじめ、無農薬の葡萄を栽培する「大石葡萄園」やワイナリーの「奥出雲葡萄園」、国産の原料にこだわった「豆腐工房しろうさぎ」や「杜のパン屋」などから成り立っています。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

 「室山農園」のシンボルは、築150年近い茅葺き屋根の古民家です。ダムの建設により失われるはずだった農家を1997年に移築。後に葺き替えなどが行われ、美しくよみがえりました。再生の背景にあるのは、2004年の雲南市の誕生です。6つの町村が合併したことを受けて結成された地域自主組織「日登の郷」が、「室山農園」とタッグを組んで、古民家の活用法を検討。2009年に田舎料理レストラン「かやぶき」をスタートさせました。

「日登の郷」会長 佐藤弘之さん 「日登の郷」
会長 佐藤弘之さん

 「かやぶき」で料理を手がけるのは、「日登の郷」のメンバーでもある地元のお母さんたち。会長の佐藤弘之さんによると、「四季折々の食材を使った郷土料理や創作料理を20種以上、ふだんはバイキング形式でお出ししています」とのこと。「このあたりは農家がほとんど。自分たちのところで採れた野菜や自分たちで採りに行った山菜をメインに、安心安全な食材を丁寧に調理しています」。

「瑞風」の立ち寄り地に選ばれたのは、“まさか”の出来事

田舎料理レストラン「かやぶき」統括リーダー 坂本暢子さん田舎料理レストラン
「かやぶき」
統括リーダー 坂本暢子さん

 開業時を振り返り、「大ベテランの達人がいたから、レストランも簡単にできるぞと不安なく始めました」と笑う佐藤さんに対し、「そんな簡単なものじゃなかったですよ」と苦笑するのは、統括リーダーの坂本暢子さん。栄養士でもある坂本さんは、スタート時からメニューづくりの中心となって活躍。専門家の方の助言を受けながら、料理をブラッシュアップさせていきました。

 地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし瑞風」のお食事でも人気の大根のべっこう煮は、お客様にお出しできるだけの味や色つやになるまで、かなりの苦労を重ねたんだとか。どのお料理も丹精込めてつくられています。

田舎料理レストラン「かやぶき」マネージャー 大坂友幸さん田舎料理レストラン
「かやぶき」
マネージャー 大坂友幸さん

 おいしい料理が評判を呼び、やがて「瑞風」の依頼が来ることに。「“まさか”の出来事でした」と坂本さんは回想します。「『こんな田舎料理で満足してもらえるわけがない』と思ったんですよ。だから、ちゃんとプロに見ていただきたいとお願いしたんです」。
 マネージャーの大坂友幸さんが続けます。「それで、料理家の大原千鶴先生に講習に来ていただいたんですよ。地元の窯元から料理に合う器も選んでいただき、盛り付け方や並べ方、お茶の出し方や接待の仕方などを教えていただいたんですが、料理自体に関しては、とてもおいしくて何も言うことがないと。なら大丈夫だと、自信がもてるようになりました」

愛情をたっぷり込めることがおいしさの秘訣!

 「瑞風」のおもてなしの日は、朝8時半に集合。9人の女性メンバーは3班に分かれ、2つの班が料理、もう1つの班が掃除や盛り付けなどを、ローテーションで担当しています。ふだんの昼食営業は2つの班で活動していますが、「瑞風」の日には全員が集まるそうです。

 雲南市は農業だけでなく、養鶏や酪農も盛ん。お米や野菜はもちろん、卵や牛乳も最高のものが地元でまかなえます。看板メニューの「室山和え」は、木次乳業のカッテージチーズを使ったオリジナルの白和え。チーズをつくる過程で生まれたホエーも、具だくさんのおみそ汁に加えます。

おみそ汁にホエーをプラス。みそもお母さんたちの手づくりおみそ汁にホエーをプラス。
みそもお母さんたちの手づくり

栄養素たっぷりの食材を余すところなく活用するだけでなく、格段に味わいがまろやかになるんです。具材や冷や奴のお豆腐は、「豆腐工房しろうさぎ」の自信作。タケノコのキンピラや干し大根のナムル、おからサラダなど、「瑞風」のメニューにはバイキングで人気の高かった品を取り入れています。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

 色とりどりの野菜や山菜を使った煮しめは、地域を象徴する郷土料理。フキやワラビ、ゼンマイやタケノコなどは、旬の時季に収穫したものを塩漬けにしておき、必要な分ずつ塩抜きして使います。どのお宅でも食べられている家庭料理でありつつ、お盆やお正月、お祭りなどで振る舞うおもてなし料理でもあるのだそう。「愛情をたっぷり込めることがおいしさの秘訣」だと笑うお母さんたち。皆さん笑顔がとってもキュートです。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

「瑞風」をお迎えするときは、いつも前日から緊張、緊張

 お昼が近づいてくると、お茶やワインを提供してくださる地元の「藤原茶問屋」や「奥出雲葡萄園」の方々もスタンバイ。野菜や山菜のヘルシーな天麩羅は、「瑞風」クルーと連絡を取り合いながら、到着時刻を見計らって揚げていきます。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

 「『瑞風』をお迎えするときは、いつも前日から緊張、緊張です」と口々に語るお母さんたち。「お客様と最初の会話を交わすまで、毎回ドキドキです。もう2年経ちますが、いまだにみんなそうですよ」。「皆さんいつもいいお客様ばかりなんですけどね。それでも緊張は変わりません」。「いつも一期一会ですからね。このお客様とは二度と会えないと思って接しています」。「たまに二度三度の方がいらっしゃると感激します。気に入ってリピートしてくださる方は、前回担当したスタッフのことも覚えてくださっているんですよ」。

全国各地のお客様から、いろんなお話が聴けるのも面白い

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

 アレルギーや苦手なものも考慮しつつ、お料理はあらかじめ決められたお席へと配膳しておきます。「瑞風バス」が室山農園へ入ってくると、みんなで手を振ってお出迎え。お客様がお席に着くと、9人のお母さんたちが9つに分かれた各テーブルのサービスを担当します。ごはんやおみそ汁など温かいものを出したり、お茶やワインのおかわりをお持ちしたり。和気あいあいとお話しながらもてなします。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

 お母さんとの会話を通じて、同じテーブルを囲むお客様同士が初めて会話されることもしばしば。共通の話題が見つかり、盛り上がることも珍しくありません。お食事を終えられたあとも歓談は続き、親しくなったお母さんと記念写真を撮られる方も多いよう。
 お帰りの際も別れを惜しみ、握った手を離さないでくださるお客様もいらっしゃるのだとか。連絡先を伝えられ、「近くに来たらうちにいらっしゃい」と言われることもあるのだそう。最後は「瑞風バス」が見えなくなるまで、ずっと手を振ってお見送りします。

 「日登の郷」のお母さんたちにとっても、お客様とのふれあいは、とても楽しいひととき。「みんな好きでやっていますからね」と笑います。全国各地のお客様から、いろんなお話が聴けるのも面白いそうで、「刺激を受けて若返った」とご満悦です。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

気持ちが伝わっていることが何よりうれしい

お見送りのあとは、皆さん一緒に昼食タイムお見送りのあとは、皆さん一緒に昼食タイム

 「帰られる頃には、昔からの知り合いみたいになりますからね。みんな出雲のズーズー弁ですが、それも人気なんですよ」と、佐藤さんは目を細めます。「こんなふれあいは、なかなか体験できないでしょうしね。会話も喜んでいただけているようで、ありがたいです。お客様から一番よく伺うのは、『ほっとする』というご感想。親戚が家へ遊びに来てくれたような接し方をするから、お客様もうれしいそうで…。『懐かしい』『おばあちゃんの家がこんな感じだった』といったお声がある一方、『こんな故郷がほしかった』と言ってくださる方もいらっしゃいます」。

 お料理への評判もすこぶる高く、お客様には「こんなにおいしいものを毎日食べているの!?」と驚かれることが多いのだそう。海外の方にも好評で、シンガポールから来られたあるお客様は、「日本には15~16回来ているが、こんなおいしい料理は食べたことがない。三つ星レストラン以上だ」と感動されたといいます。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし

 「良いところに連れてきてもらえた」「帰って家族に教えてあげないと」「おじいちゃんおばあちゃんを連れて来てあげたい」…取材に伺った日も、そんな喜びのお声にあふれていました。旅慣れたお客様も、「こんな素敵な場所があったのか」と驚かれている様子。

 「『瑞風』の旅が始まってから、ここに来てくださる方も増えましたし、地域が活気づいています」と佐藤さん。「普通の旅行では、こういうところがあることすらわからない。観光で来るようなところじゃありませんが、来てみたら自然の風景に感動するし、ごはんを食べたらおいしいので、とてもご満足いただけているようです。『心を込めてもてなしてくださっているのがよくわかる』と言ってくださる方もいて。気持ちが伝わっていることが何よりうれしいですね」。

地元のお母さんたちが心を込めた料理でおもてなし