MIZUKAZE PROJECT STORY

瑞風プロジェクトストーリー

October 2020

vol.26

さらに美しく磨かれた「瑞風」で、新しい旅へ

さらに美しく磨かれた「瑞風」で、新しい旅へ

 第26回目は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」で初めてとなる要部検査の取り組みについてリポートします。主体となって担当するのは、鳥取県米子市にある後藤総合車両所。工程の内容や「瑞風」に対する想いなどを、5人のメンバーに伺ってきました。

運行4年目を迎えた「瑞風」の安心・安全を守るために

さらに美しく磨かれた「瑞風」で、新しい旅へ

 要部検査とは、動力・走行・ブレーキといった重要な装置をチェックするもの。運行期間中の定期検査とは違い、車両や装置を解体して行うメンテナンスです。「瑞風」に対しては、運行4年目に入った2020年の7月上旬から2カ月強の期間で行われました。
 「瑞風」には、JR西日本で初めて使われるエンジンや在来線で初めて搭載された揺れを少なくする装置など、これまでの車両になかった新しい設備が多く、検査をするための機器から導入する必要もあったといいます。そのため要部検査の準備は、運行開始当初からすでに始まっていたのだそうです。

プロジェクトチームを組み、検査や修繕の作業をバックアップ

鳥取県米子市にある後藤総合車両所鳥取県米子市にある
後藤総合車両所

 車両の検査や修繕などの業務を担当するのが総合車両所。要部検査の舞台となった後藤総合車両所は、JR西日本が有する車両すべてのエンジンの検査・修繕を行っています。そのなかで現在、「瑞風プロジェクト」チームに所属するのは、曽良訓弘社員と井田憲太郎社員、そして菊川真吾係長。3人は語ります。
 「整理するべき点や課題、期間や検査対象などを、JR西日本の本社や支社、そして車両所の関係者が一体となって議論していきました。『瑞風』独自の設備もあり、何を検査・修繕して何を取り替えるのかなどを、すべての機器に対して決めていったので、ほかの列車よりも相当な時間と労力がかかりました」(曽良社員)
 「初めて扱う装置の検査に関しては、メーカーと調整して試験機を導入・改良し、指導もしてもらいました。『瑞風』の日々のメンテナンスは、発着地である大阪駅に近い、網干総合車両所宮原支所で行われているので、わからない箇所については現場担当者と一緒に宮原まで確認に行くことも。向こうのスタッフとも情報共有しながら詰めていくのが結構大変でしたね」(井田社員)

左より、後藤総合車両所 計画科 「瑞風プロジェクト」の菊川真吾係長、曽良訓弘社員、井田憲太郎社員左より、後藤総合車両所 計画科
「瑞風プロジェクト」の菊川真吾係長、
曽良訓弘社員、井田憲太郎社員

 「一般的な要部検査に加え、外観や内装にも特別な補修を行うのが『瑞風』特有の工程。空調や水回りなどの接客設備が他の列車に比べ多く搭載されているため、どう検査・修繕していくのかも決める必要がありました。現場社員の作業がスムーズに進むよう、バックアップしていくのが私たち3人の仕事です。何か問題が起きれば立ち会い、一緒に調べて必要な材料があれば手配し、関係者と連携をとる。3人それぞれがほぼ現場に出ているので、情報共有に留意しながら取り組みました」(菊川係長)

2020年7月上旬、一時留置されていた後藤総合車両所出雲支所から本所へと入場する「瑞風」2020年7月上旬、一時留置されていた後藤総合車両所出雲支所から本所へと入場する「瑞風」

少しの傷もつけないよう細心の注意を払い、きめ細やかに補修

 車内に保護材を貼るなどの養生を施すのも、「瑞風」ならではの作業です。特別仕様の内装に傷をつけないよう細心の注意を払い、「瑞風」専用の保護具も用意しました。
 「瑞風」にロボット塗装機を使用するのも初めてのこと。一般的な列車の塗装が1層なのに対し、「瑞風」は光沢塗装やクリア塗装を加えた3層となるため、まずは解体前の廃車を「瑞風」カラーに塗って試験。クリア塗装をロボットで行う一方で、部分的な色あせや欠けている部分はすべて手塗りで直していきました。

内装に傷がつかないようにヘルメットの上から柔らかい素材のカバーを装着。靴にもカバーをつける内装に傷がつかないようにヘルメットの上から
柔らかい素材のカバーを装着。靴にもカバーをつける
細かな傷などに印をつけ、手作業で塗り直していく細かな傷などに印をつけ、手作業で塗り直していく

培った知識や技術を活かし、初めて扱うエンジンも万全の状態に

後藤総合車両所 内燃機関担当の中曽享一社員後藤総合車両所 内燃機関担当の中曽享一社員

 エンジンの検査・修繕を取り仕切るのは、この道23年のベテラン、中曽享一社員です。前身の国鉄時代から気動車(エンジンを搭載した鉄道車両)に関する業務一筋でしたが、「瑞風」のエンジンは初めて携わる形式だったため、やはり準備が大変だったといいます。
 「検査に至るまでに、資料を見たり、道具や工具をそろえたりと、ほかとの違いを洗いだすのに骨が折れました。検査自体は今までの経験を応用させられたものの、大変だったのは解体後の組み上げです。従来の気動車なら、エンジンの回転数は変動するのですが、発電機がエンジンに直結している『瑞風』の場合、常に発電させておく必要があるので、停車中も走行中も毎分1,800回転でエンジンが回っている状態。そのため解体した発電機をエンジンに取りつける際、回転部分の中心が少しでもずれると振動が出てくるので、とても慎重に行わなければいけません。これまでエンジンを取り付けるのにかかる時間は、1台15分ほどでしたが、『瑞風』は1時間半から2時間もかかるんですよ。その訓練も入念に行いました」(中曽社員)

後藤総合車両所 馬力試験担当の田村政輝社員後藤総合車両所 馬力試験担当の田村政輝社員

 解体して検査し、再び組み上げたエンジンと発電機には、馬力試験を行います。その担当が、田村政輝社員です。
 「擬似的に負荷をかけて、毎分1,800回転を維持できるかなど、性能を調べていきます。やはり試験機自体がなかったので、作成してもらうところからスタートしました。検査はもちろん試験に関しても長年携わってきたベテランがいるので、しっかりと技術を受け継いで取り組んでいます」(田村社員)

関わる人々の想いがさらに詰まった車両へと変身した「瑞風」

 新型コロナウイルス感染予防のため、車両天井部に空気清浄機を取り付ける工事も決定。要部検査が終わる9月後半より、後藤総合車両所と宮原支所で分担して行います。もともと要部検査の時期は決まっていたものの、コロナ禍により2020年2月末の運行を最後に運休期間へと入ってしまった「瑞風」。最後に、それぞれの想いを聞かせてもらいました。

さらに美しく磨かれた「瑞風」で、新しい旅へ

 「ちょうど入社する頃に、豪華な寝台列車が走り始めるという話を聞いていたので、実際に携われて本当にうれしいです。どの列車でもそうですが、エンジンが故障するのは命とり。性能試験をしっかり行って、まったく不具合が起きないという自信をもって送りだします。一生懸命サポートしていきますので、前身の『トワイライトエクスプレス』のように、長く愛される車両になってほしいですね」(田村社員)
 「開業当時から良い列車だと思っていたので、ついに携われるときが来たなと感慨深かったんですよ。車両はお客様を乗せるためにあるもの。早くお客様を乗せて走ってくれることしか、願いはありません。コロナに打ち勝つほど安心・安全な車両をめざして業務にあたりました。皆さんに喜んでいただけるような車両を提供しますので、安心して旅を楽しんでほしいですね」(中曽社員)

さらに美しく磨かれた「瑞風」で、新しい旅へ

 「『瑞風』の営業開始前、設計上の性能が満たされているか試験するための列車に添乗したことがあったんですが、多くの方々から写真を撮られたことで、より緊張感や誇りを感じました。今回とくに力を入れたのが、塗装と内装修繕です。細かい傷も直していますし、内装も数百箇所ぐらい修繕しています。まるで新しい車両へと生まれ変わったかのように感じていただけたら幸いです」(曽良社員)
 「コロナ禍で旅行に出られない時期が続きましたが、皆さん心待ちにしてくださっているようでありがたいです。私自身、沿線の出身なので、『瑞風』に対する期待もひとしお。山陰や山陽の良い部分を発信することに貢献してくれる車両であり続けてほしいと願いながら、今回検査・修繕を進めていきました。運転を再開した暁には、地域の魅力をさらに広く届けていってほしいです」(井田社員)
 「日頃メンテナンスをしているスタッフはもちろん、今回の要部検査で数百名が『瑞風』に携わり、より良い車両をつくりあげようと心を込めたので、見た目にはわからなくても想いがさらに詰まった車両になっているはずです。それを乗車される方にも感じていただいて、良くなったねと思っていただけたらうれしいですね。コロナ禍により予定外に長く、『瑞風』が営業運転から離れていますが、ぜひ期待をもってお待ちいただきたいですね」(菊川係長)

さらに美しく磨かれた「瑞風」で、新しい旅へ

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