MIZUKAZE PROJECT STORY

瑞風プロジェクトストーリー

October 2020

vol.25

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 第25回目は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の全コースで1日目のお昼に行われている「瑞風茶会」についてご紹介します。「瑞風茶会」は、裏千家のご協力のもと6名の方々に乗務いただいており、そのうちのお二人、米原宗智さん、佐藤宗美さんにお話を伺いました。

「瑞風」のおもてなしの心を体現する、「瑞風茶会」

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 「瑞風茶会」は「瑞風」の旅初日に5号車のラウンジカーで行われているお茶会です。茶道を通じて「瑞風」のおもてなしの心を体現しようと、2017年6月の運行開始時から実施しています。スタイルは、テーブルと椅子を使った立礼(りゅうれい)式。二交代制の昼食時間帯に希望される方にご参加いただいて実施しています。
 この「瑞風茶会」は、6名がローテーションを組んで毎回2名ずつが乗車し、サポートしてくださっています。運行開始前の準備は2017年の初頭から進められました。

米原宗智さん米原宗智さん

 「茶の卓(常設の立礼席)や展観のための千家十職の道具はすでに決まっていましたが、茶会運営をするにあたって、実際に何が必要でどこに収納するかなど、白紙の状態から打ち合わせを重ねました。水屋(お点前の準備や片付けをして道具を収納する場所)もありませんし、瑞風クルーの皆さんも茶道の経験はゼロ。動く列車の中という特殊な環境で行う茶会ですので、つくりこみの段階は苦心しましたが、やりがいもありました。運行初日を迎えたときの感激は忘れられせん。とても良い経験をさせていただきました。」(米原さん)

佐藤宗美さん佐藤宗美さん

 「列車内ですからお道具を清める水の量にも制限があったり、バーカウンターのなかでお茶を点(た)てる難しさもあったりと、まさに手探りの状態。洗って使うものと拭いて使うもの、捨てていいものといけないものなど、クルーには一つずつ覚えていただきました」(佐藤さん)
 「車内では準備も後片付けもお客様の目の前で行うことになるので、見苦しさのない素早い対応を心がけていますが、一連の流れは隠しようもありません。逆に言えば、普段目にすることのない場面でもありますから、その姿も含めお茶の体験として楽しんでいただこうと努めています。」(米原さん)

「お茶とはどういうものか」から学んだ、「瑞風」のクルーたち

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 もてなす側の亭主を務めるのは、「瑞風」の列車長。裏千家のお二人は、亭主のサポートをする半東(はんとう)とお点前を担いますが、限られた時間のなか最大18名となるお客様の分のほとんどを点て、お運びするのはクルーたちです。そのための研修はまず、京都市上京区にある裏千家の施設をお借りして重ねられました。

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 「ただお茶を点てられればいいというものでもありません。茶道とはどういうものか一端を知っていただくためにも、お茶室の雰囲気を味わってもらうところから始めました。初めてお茶に出会うクルーたちも、今日庵(家元)の近くに行くことで感じるものがあるだろうと。『瑞風茶会』はクルーの皆さんに茶道を知ってもらうチャンスでもありますし、一碗のお茶を通してお客様と心を通わせる楽しさを感じてもらえたら、私たちも嬉しいですね」(米原さん)

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 そこからさらに車庫や試運転中の「瑞風」で実践を積んでいきましたが、クルーたちの意欲は強く、とても吸収が早かったとお二人は口をそろえます。
 「皆さんのお仕事に対する熱意には目を見張るものがあります。茶道という初めての世界に対しても熱心に取り組み研鑽を重ねられました。お客様に美味しいと飲んでいただけるようなお抹茶を点て、お出しできるようになったことに、心から感心しています」(佐藤さん)

想いを込めて選んだのが、「瑞縁(ずいえん)」という銘のお抹茶

 「瑞風茶会」はおよそ15分間の気軽なお茶会です。まずは、亭主である列車長が「流れる車窓をご覧いただきながら、お菓子とお茶をお楽しみください」とご挨拶し、沿線ゆかりの道具を使った点前がはじまります。半東が茶席にまつわるお話をするなか、お客様に季節の和菓子と薄茶を一服お楽しみいただきます。

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 「茶会というと身構えてしまわれる方もいらっしゃるので、むしろいかにリラックスしていただけるかを大切にしています。お菓子もお茶もおいしく味わっていただけるのが一番。車窓からの景色も見ながら楽しく過ごしていただければとお伝えしています。また、旅の一部として『瑞風茶会』を楽しんでいただきたいので、召し上がっている最中でも車窓の景色が美しければ写真を撮ることをお薦めすることもあります」(佐藤さん)

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 「茶会はまさに一期一会。一日のうちの二席でもまったく違います。お客様が雰囲気をつくってくださることもあり、先日もリピーターのお客様がお道具を紹介されてとても盛り上がったんですよ。その日乗り合わせたお客様同士が旅のスタートに一会を通してお顔馴染みになっていただき、あとの時間がより楽しくなればと願っています」(米原さん)
 「『瑞風茶会』でお飲みいただくのは『瑞縁』という銘のお抹茶です。ひとときをご一緒できたご縁に感謝して選びました。『瑞風』でお会いできたご縁、このひとときをご一緒できたご縁に毎回とても感謝しています」(佐藤さん)

西日本の魅力を教えてもらっている、「瑞風」の旅

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 「『瑞風』は私たちにとっても憧れの寝台列車です。立ち寄り観光地は行きたいと思わせてくれるところばかり。個人的に少しずつ訪ねたりしています。美しい景色や訪問先の話題でお客様との話が弾むこともありますし、沿線で待っていてくれている子どもたちに一緒に手を振り返したりする中でお客様との距離もグッと近くなります。一碗のお茶を通して『瑞風』や茶道文化の魅力をお伝えする一方で、私たちも西日本の魅力を教えてもらっていると感じます」(米原さん)

楽しい思い出として残る、「瑞風」での一期一会を

 回を重ねるごとに、「瑞風茶会」をご存知の方やリピーターの方も増えてきました。「楽しみにしていた」とおっしゃる方が多くなってきたことも、大きな喜びだとお二人は語ります。
 「『瑞風茶会』をきっかけに茶道を始めたくなった、もう一度やってみたくなった…そんなお声を伺うと感激します。普段の生活でお茶会に行こうという機会はそうないでしょうが、この『瑞風茶会』を通じて身近に感じていただけたら嬉しいです。楽しい『瑞風』のご旅行のなかで『瑞風茶会』のことが記憶の1ページにでも刻まれ、何年か経っても思い出していただけるようなお茶会を続けていきたいです」(佐藤さん)

「瑞風茶会」で使用している大西清右衛門作の釜についての記事はこちら
ISSUE03京都の文化にふれる Vol.1 ~京都の文化にゆかりのある方が語る~

※掲載されている情報は、公開時のものになります